香港資産運用奮闘記ASEAN・極東 > チャイナマネーがカンボジアに  〜外国直接投資に関わるカンボジアの政策〜
2007年01月26日

チャイナマネーがカンボジアに  〜外国直接投資に関わるカンボジアの政策〜

本日の日経新聞国際面からの引用です。
「対カンボジア、海外直接投資が前年比5倍に」

カンボジアのフンセン首相は、2006年の対カンボジアへの海外直接投資総額が、
42億ドル(約5040億円)と、前年の5倍にも拡大している
ことを明らかにしました。


海外からの投資件数は101件で、そのうち過半数の53件は繊維製品関連だそうです。
確かに、GAPやバナナリパブリック、ジョルダーノ、ボッシーニなどのSPAブランドの商品タグには、
「Made in Cambodia」といった表示を多く見かけるようになりました。

このような業態は製造小売業(SPA)と呼ばれています。
→参考「製造小売業(SPA:Speciality store retailer of Private label Apparel)」

ちなみに私、ボッシーニの株は塩漬けです。まさにSPA!「塩漬け・プライベートレーベル・アパレル」(苦笑)
→関連記事「ボッシーニ(HK0592:Bossini International Holdings Ltd)が約定されました」

これら対カンボジアへの海外直接投資額のうち、国別の投資割合は公表されていませんが、
関係者によると中国からの投資がかなりの割合を占めており、チャイナマネーはカンボジアへ流れているようです。

ベトナム発展の影に隠れて、あまり話題にのぼらないカンボジアですが、
実はカンボジアの投資制度はシンガポールや香港に次ぐくらい、外資に対して寛容です。

アジアの投資環境比較―中国・香港・台湾・韓国・シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン・インド・ベトナム
アジアの投資環境比較
中国・香港・台湾・韓国・シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア・フィリピン・インド・ベトナム

ジェトロ 日本貿易振興会= JETRO=

by G-Tools


米国のヘリテージ財団の経済的自由度指数

ヘリテージ財団(Heritage Foundation)「2006年度版経済的自由度指数(Index of Economic Freedom)」
によると、カンボジアは「政府による強制、経済活動上の制約」から自由であるかどうかという観点では、
2006年、アジア地域の32カ国・地域中、第9位にランクされていて、比較的自由経済の国であると分類されています。
そしてなんと、ASEAN諸国の中ではシンガポールについで第2位の経済的自由度を持っています。
(2007年に入ってからは、やや落ち込んでいます)

経済的自由度の総合指数















また私はミャンマー人の知人が多いのですが、彼らがよく言うように、また上記グラフの通り、ミャンマーは
経済的制約がとても強く、ミャンマーでビジネスを起こすには、外国人・母国人を問わず相当大変なようです。
→関連記事「今日はミャンマー人のお客さんが来ました」

カンボジアがシンガポールについで第2位の経済的自由度を持つようになったのには、
1997年〜2006年にかけての10年間で、ヘリテージ財団の指標とされる経済的自由度10項目のうち、
以下の項目において、カンボジア政府が大きな改善を行ってきたからです。

- 金融政策
- 政府による介入
- 賃金および価格
- 金融関連
- 外国投資
- 財産権
- 規制


そして昨年2006年は、こうした投資環境が整ったカンボジアに目をつけた中国人が、徐々に資金を投入し、
結果として2005年の5倍にもなるほどの外国直接投資が入ってきた
というわけです。

ちなみに今日現在のトップ10は以下10カ国です。さすが香港・シンガポール。

経済的自由度のワールドトップ10



















つい先日、カンボジア開発評議会発行のカンボジア投資ガイドという分厚い資料を入手しました。
それを読むと、ビジネス投資においてはカンボジアの投資環境(コスト面など)は大変良好で、
外資に対する様々な制度も整っておりますし、今後カンボジア進出企業が徐々に増えると思います。


カンボジアの概略

















以下、参考までにカンボジアのビジネスコストの一例です。

カンボジアの人件費












カンボジアの事務所賃料




カンボジアの倉庫賃料








外国直接投資に関わるカンボジアの政策

「2000年〜2005年第2次経済開発計画」においてカンボジア政府は、外国直接投資
(Foreign direct investment:FDI)を経済開発への主要な原動力として規定
しています。
カンボジアのFDIに関する法制度は、基本的に投資を奨励するように設計されているといえます。

投資法が規定しているように、FDIは土地所有を除いて内国法人と全く差別無く扱われており、
多くの分野で外資規制が無く自由に投資することが許されています。


また現行の投資法では、「最終投資登録証明書(Final Registration Certificates)」を入手した
投資家に対して、様々な優遇措置が与えられています。

さらにカンボジア政府は、投資促進サービスの向上を図ってきています。例えば、2005年には経済特区の促進を図るために、
カンボジア開発評議会(Councile for the Development of Cambodia:CDC)内に、
カンボジア経済特別区委員会(Cambodia Special Economic Zone Board:CSEZB)を設立しています。


カンボジア経済特別区委員会の管理の下で、投資プロジェクトの登録から日々の輸出入許可にいたるまで、
経済特区でのビジネス活動における、ワンストップサービスを提供しています。

ちなみに、現在以下10箇所の経済特区を計画・建設中で、中でもプノンペン経済特区に関しては
もっとも早いスピードで建設が進んでおり、2007年末までに第1期工事が完了する予定です。


カンボジアの経済特区











メコン地域開発について

カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5か国と中国の雲南省を流れる全長4,900kmのメコン河は、流域面積が
日本の2倍以上(79.5万km2)、流域人口は約2億5千万人にも及び、その流域はさまざまな資源に恵まれています。
「メコン地域開発」とは、メコン河流域のこれらの国・地域を国境をまたいで広域的に開発しようとする構想です。
これを推進することで、流域諸国間の関係が強化されるとともに、ASEANの新規加盟国の底上げを通じたASEANの
内部格差の是正、ひいてはASEANの統合強化が期待されます。<<以上外務省ホームページより引用>>

中国の華南経済圏とベトナムを結ぶ高速道路の整備計画もスタートしており、ASEAN諸国は、中国市場向け
生産拠点の座も射程圏内にいれており、今後もの凄い勢いで発展していくことが予想されています。
→関連記事「[タイ][ベトナム]が有力投資先に台頭、生産から開発拠点に」


カンボジアは、株式市場がありませんし、金融機関もまだまだ機能していません。
なので、カンボジアに投資するには現段階では、ビジネス投資、土地・不動産投資などが主体となります。

詳しく書き出すときりがありませんから(笑)、カンボジアの投資制度は数回に分けて書きたいと思います。

今日は友人たちとの飲み会がありますが、その中の友人のひとりに、カンボジアに長く駐在していた
外務省勤務の友人がおりますので、今日はカンボジアのお話を彼に教えてもらおうかと思っております(笑)

カンボジアを知るための60章
カンボジアを知るための60章
上田 広美 岡田 知子

関連商品
地雷の村で「寺子屋」づくり―カンボジアひとりNGO・栗本英世の挑戦
305 ポル・ポト<革命>史 虐殺と破壊の四年間
アキラの地雷博物館とこどもたち
カンボジア こんなとき何て言う?
カンボジア経済入門―市場経済化と貧困削減
by G-Tools

カンボジア経済入門―市場経済化と貧困削減
カンボジア経済入門―市場経済化と貧困削減
広畑 伸雄

関連商品
カンボジアの復興・開発
カンボジアを知るための60章
地雷の村で「寺子屋」づくり―カンボジアひとりNGO・栗本英世の挑戦
旅の指さし会話帳〈19〉カンボジア
by G-Tools



そして明日は・・・
マークモビアス氏の講演会!パンローリング投資戦略フェアです。

マークモビアス氏が、ウクライナ・スロベニア・ルーマニア・ベトナム・UAEの5ヶ国について
熱く語ってくれることを期待しています。
→関連記事「状況によってポートフォリオの中味はすっかり代わってしまうファンド」

Mark Mobiusマーク・モビアス(Mark Mobius)
ボストン大学で修士号、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。
香港、シンガポールを拠点に、アナリスト、ファンドマネージャーとして活躍。
1987年からテンプルトン・グループで活躍、高い運用成績を上げ、新興市場投資の
第一人者となる。
現在、テンプルトン・アセット・マネジメント(シンガポール)代表
「世界で最も影響力のあるマネーマネージャー30人」の第8番目に選ばれる
(スマート・マネー誌 1997年9月号)

主な著書に 「国際投資へのパスポート」「Mobius on Emerging Markets」
「Mobius on Emerging Markets」「Derivatives」「Risk Managmen」など多数。



パンローリング・第5回ご愛顧特別感謝祭 投資戦略フェア2007

第5回ご愛顧特別感謝祭 投資戦略フェア2007


私ももちろん予約しました。明日、東京・三軒茶屋でお会いしましょう!(^ー^)ノ
国際投資へのパスポート―モビアスの84のルール
国際投資へのパスポート―モビアスの84のルール
マーク モビアス Mark Mobius 林 康史

関連商品
まったくはじめてのアジア株入門―伸びている市場は中国だけじゃない!アジア各国の株式市場や経済データから買い方・売り方までがやさしくわかる
ピーター・リンチの株で勝つ―アマの知恵でプロを出し抜け
グリーンブラット投資法 − M&A、企業分割、倒産、リストラは宝の山
ホントは教えたくない資産運用のカラクリ 投資と税金篇
バフェットからの手紙 − 「経営者」「起業家」「就職希望者」のバイブル
by G-Tools



香港資産運用奮闘記ASEAN・極東 > チャイナマネーがカンボジアに  〜外国直接投資に関わるカンボジアの政策〜


この記事へのトラックバックURL
    この記事へのコメント
  1. 中国人がカンボジアに進出するのは
    ビザを取る必要がないことも一因ではないでしょうか。
    Posted by OnsidekickRecover at 2007年01月27日 19:16
  2. OnsidekickRecoverさま

    こんにちは。コメントありがとうございます。

    勉強不足で申し訳ないのですが、ビザを取る必要が無いということは
    中国人はカンボジアで、ノービザでビジネスができるということですか?
    Posted by kz@銅鑼湾 at 2007年01月29日 18:51
  3. 管理人様へ

    いつも興味深く拝見させていただいております。
    ビジネスビザのことまではわかりませんが、
    カンボジアは中国人が事前にヴィザの取得を必要としないで
    入国が可能な数少ない国という意味です。
    そのような国は他にはないようです。
    (北朝鮮は知りませんが)
    Posted by OnsidekickRecover at 2007年01月31日 22:12
  4. OnsidekickRecoverさま

    こんにちは。コメントありがとうございます。
    なるほど。中国人にとってカンボジアは入り口の敷居が低いんですね。
    カンボジアは日本人の観光入国もビザ必要ですからね。

    知人の話によると、カンボジアのカジノ街は、中国人とタイ人ばかりだそうです。
    Posted by kz@銅鑼湾 at 2007年02月01日 14:56

 ※コメント入力時に、引用文に全角の「>」をつけると赤の太字で強調表示されます