カレンシーボード制とは固定相場制の一種で、
為替レートの安定を手に入れる代わりに金融政策を放棄することになります。
尚且つ金利水準が米ドルに追随するため、
インフレが起きても金利を引き上げることもできませんし、
経済が悪化しても金利を引き下げて景気刺激策をとることもできません。
1997年のアジア通貨危機に襲われた東南アジア諸国や経済が破綻したアルゼンチンのように、
自国通貨を米ドルに固定しつつも中央銀行による金融政策を手放そうとしないと、
国債の増発や財政赤字で外貨準備高が枯渇しても貨幣の発行量が調整されず、
通貨の信用崩壊を避けることができなくなります。
しかし香港ドルが採用しているカレンシーボード制にはこうした事態を防ぐ機能があります。
ヘッジファンドなどが大規模な香港ドル売りを仕掛け、
多くの人が、香港ドルはいずれ切り下げられるのではないかと思ったとします。
すると人々は、自分が持っている香港ドルをとりあえず米ドルに交換しておこうと考えますね。
みんなが香港ドルを米ドルに換えてしまうと、市場に流通する香港ドルが足りなくなってしまいます。
すると、需要と供給の法則で、
香港ドルの希少性が高まり金利が上がります。
香港には金利を管理する中央銀行がありませんから、理屈上はこの
金利は無制限に上がることになります。
そうなると、通貨の切り下げの可能性があったとしても、
金利の高い香港ドルで運用したほうが得だと考える人が出てきます。
香港ドルのカレンシーボード制は、こうした
金利裁定が働いて、やがてバランスがよくなるようになります。
実際、1997年のアジア通貨危機のときには、
香港ドルの金利が300%まで上昇しましたが、
カレンシーボード制の香港では、香港ドルを売っても
金利が上昇するだけで交換レートは下がりません。
ヘッジファンドなどは、多額の香港ドルを保有しているわけではなく、市中銀行から短期で香港ドルを借り、
それを米ドルに交換することで通貨を攻撃するので、いずれは借り入れ金利に耐え切れなくなってしまいます。
しかし、カレンシーボード制には弱点もあり、
金利が上昇するとそれに反応して、
株式・債券・不動産などの投資商品が値下がりします。
カレンシーボード制とは、
株式や不動産などを犠牲にすることで、通貨の交換価値を守る仕組みになっています。
なので、
香港ドルという通貨が安定している代償として、
香港の株式市場や不動産は値動きの激しいハイリスク商品だという理解が必要です。
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カレンシーボードの経済学―香港にみるドル連動制の再考
↑香港ドルという通貨がいかに優れているかが分かります。
これを読めばあなたも香港ドルで運用したくなる??
Posted by causeway_bay at 23:40│
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