シンガポールの政府系投資会社
テマセクホールディングスは28日、2004年に死去した同国の資産家から
英スタンダードチャータード銀行(SCB)の株式11.55%を取得することで合意したと発表しました。
テマセクホールディングスがグループで保有する同行株は11.62%に増えて、
SCBの筆頭株主になります。
テマセクが故クー・テップアット氏の資産管理会社から取得するSCB株は、約1億5239万株です。
買収価格は公表しておりませんが、27日の株価で計算すると、
約23億ポンド(約4780億円)になります。
この
テマセクホールディングスという会社、最近よく日経新聞で見かけるようになりました。
先日も、タイのタクシン首相一族が経営する通信関連の持ち株会社
シンコーポレーションを
733億バーツ(約2100億円強)で取得したというニュースがありましたね。
→関連記事「タイのタクシン首相一族、傘下の持ち株会社を2100億円で売却」
【テマセクホールディングスって一体どんな会社なんでしょう?】
調べてみると、
シンガポールの国策と非常に密接な関わりを持っている会社です。
水・食料・天然資源などを含め、ほとんどの資源や物資を輸入に依存している小国シンガポールが
国際社会で生き延びていくためには、貿易・港湾・航空・通信・金融などの産業を発達させ、
その分野で世界でもトップクラスにするしか道はありません。
その中でも特に「金融」という分野に、シンガポール政府は最重要項目と掲げて舵をとってきました。
そのような戦略の中で、テマセク・ホールディングスという投資会社が設立されたわけです。
ちなみにこの会社、
Moody's、
Standard & Poor'sともに、長期投資対象としてAAAという評価を獲得しています。
→参考サイト「TEMASECK HOLDINGS > INVESTOR RELATIONS」
このテマセク・ホールディングスの傘下には、
シンガポール航空、
DBS銀行、
シンガポールテレコムなど
世界でもトップクラスの会社が数多くあり、その名を連ねるだけでもそうそうたるメンバーです。
→関連記事「アジア企業の2005年末株式時価総額ランキング」
シンガポール航空などは、9.11の同時多発テロ以降、世界的な航空不況に陥っている中においても、
四半期ベースでの損失はあったものの、一事業年度ベースでは損失を未だ出したことが無い、
そして、株式時価総額は米国の
サウスウエスト航空に次ぐ
世界第二位を誇ります。
話は戻しまして、テマセクホールディングスは、もちろんシンガポールだけではなく、今回のニュースのように、
英国、中国、タイ、マレーシアなどのグローバルカンパニーへの投資業務をここ数年で大きく加速させています。
また、隣国同士のシンガポールとマレーシアは、境界線問題や文化・宗教間対立などといった大きな確執がありましたが、
シンガポールのこのような政策を背景に、両国間の政治・経済関係は改善されてきています。
→関連記事「マレーシア&シンガポール、確執40年超えて進む改善関係」
テマセク・ホールディングスは、先にも述べたようにシンガポール政府によって設立された戦略的投資会社であり、
現在シンガポールが置かれている状況(マレー半島先端の小国であり、水・食料・資源・物資をほぼ輸入に依存など)
を考えますと、投資で失敗は許されません。シンガポール国家の明暗を大きく分けてしまいます。
今後同社が、中国やインド、ロシア、中近東など、どのような企業に投資するのか注目です。
Posted by causeway_bay at 10:28│
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