香港資産運用奮闘記税金 > 企業の税負担軽減2段階、実効税率下げ検討
2006年11月10日

企業の税負担軽減2段階、実効税率下げ検討

本日の日経新聞経済面からの引用です。
「企業の税負担軽減2段階、実効税率下げ検討」
政府税制調査会は11月9日の会合で2007年度税制改正の論点を固めました。

焦点の法人税減税は、
1.企業の減価償却制度の見直し
2.約40%(国税・地方税合算)と主要国より水準の高い実効税率引き下げる


この2点について具体的な検討が進んでいます。

1.企業の減価償却制度の見直し

1.については、これまで購入価格の95%まで(例えば100万円でモノを買ったら95万円まで)しか、
償却できませんでしたが、改正によって100%全額(例えば100万円でモノを買ったら100万円)償却
することが可能になる公算が大きいとのことです。尚且つ耐用年数も短縮させるという案もあるとか。

不動産投資をされている方や、企業の会計に少しでも携われている方はお分かりだと思いますが、
"減価償却費"という言葉が、馴染みのない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明しますね。

例えば、給与所得のサラリーマンは"税引き後"の所得からマイカーを購入するのですが、
事業主や会社経営者は"税引き前"の収入からマイカー(名目上は社用車ですが)を購入します。
→関連記事「所得税の定率減税廃止合意 〜サラリーマン法人化のススメ〜」

そして、マイカーの購入費用を少しづつ経費でおとして翌年以降の税金を下げることができます。
分かりやすく一言で言うと↑これが減価償却費用で、今まで95万円しか経費で認められなかったものを、
100万円まで認めてあげますよという事です。

減価償却の仕組み






















2.約40%(国税・地方税合算)と主要国より水準の高い実効税率引き下げる

なお、2の実効税率の引き下げについては2008年度以降、2段階に渡って実施される見通しです。
現在、法人税+法人事業税+法人住民税を合算したおおよその実効税率は40%ちょいですが、
日本企業の国際競争力を促すために、経済界の有力者から税率引き下げを求める声が相次ぎ、
それが今回、政府税制調査会で実際に議論されることとなりました。

しかしそれに対して、
なぜかサラリーマンからは所得税率引き下げを求める声は出ません
なぜでしょう?恐らく解っていないから、解りにくい仕組みになっているからです。

年末調整という悪法があるゆえに、ほとんどのサラリーマンは税の計算を会社に任せてますので、
「どのような計算プロセスで所得税が弾き出され、いくら差し引かれてそれが何に使われているか?」
このあたりを、恐らく大多数のサラリーマンの方が理解していないと思うのです。
→関連記事「自分がいくら税金を払っているか知っていますか?(源泉徴収票の見方)」


このような法人税減税に対して、一方ではサラリーマン増税+社会保障費増税の傾向を考えると、
今後日本の仕組みがどのように変化していくか、容易に想像できると思います。

口うるさくてやかましい経済界を考慮すると、法人減税(↓)を。
おとなしくて物言わないサラリーマンを考慮すると所得増税(↑)を。


このような傾向が数年は続くでしょう。
恐らくこの国で一番お金を持っている人は、プライベートカンパニーのオーナー社長でしょう。
彼らはビジネスはもちろんですが、不動産や株式も法人名義で運用されているケースが多いのです。
なぜなら、そうすることによって上手に税金と資金移動をコントロールできるからです。

しかしコントロールできるがゆえに、こんな面倒な税務調査などにもお付き合いしなくてはいけません。
→関連記事「2〜3日間かかる税務調査を、せめて半日程度に短縮できないものか?」

サラリーマンは税金をコントロールできません。
しかも最近は個人の送金規制も強くなっている傾向にあり、送金限度額や窓口での身元証明など、
「資産運用さえもろくにさせてもらえないのか?」と言いたくなりますね。




今後の税制の動きを考えると、サラリーマンにとって氷河期とも言える時代が来るかもしれません。
そのうちこの国は息をしただけで、道を歩いただけで税金を徴収されてしまうのではないか?とさえ思います。
→関連記事「所得税の定率減税廃止合意 〜サラリーマン法人化のススメ〜」

以下の表を見ると、日本は欧米に比べてまだまだ課税最低額が高いので、日本の国からしてみれば、
課税最低額をさらに引き下げていくことは当然強気の改正と言えるわけです。


世界の所得税率と課税最低限



















→参考「東京税理士会 > 各国の所得税率と課税最低限」

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    この記事へのコメント
  1. 日本のしがないサラリーマンとしては、冷遇傾向の「給料からの収入」だけに頼るのではなく、厚遇傾向の「企業≒株式投資からの収入」も得られるよう、ダブルで備えるのが吉と考えております。
    Posted by 水瀬 ケンイチ at 2006年11月12日 09:04
  2. 法人税率を上げて、所得税率を下げろという主張がよくありますが、仮に法人税率を上げたとしても、企業は従業員の給与を引き下げたり、正社員を減らすことで対処するに決まっていますから根本的な解決になりません。

    サラリーマンは、確定申告する権利を自ら勝ち取らない限り、永久にむしられ続けるだけだと思います。そして、その傾向は今後ますます増大するはずです。何しろ納税者の90%半ば以上はサラリーマンですから。
    Posted by PALCOM at 2006年11月12日 14:14
  3. 水瀬 ケンイチさん

    こんにちは、相互リンクではお世話になってます。
    確かにおっしゃるとおりです。給与以外の所得を持つことが
    今後ますます主流になっていきそうですね。

    ネットでの小遣い稼ぎ(例えばアフィリエイトやオークション)は、
    少額の収入でも、通信費や書籍代、交通費、パソコン代を経費として
    落として"見た目の損失"を作り、給与と事業所得を合算して総合課税で、
    給与から天引きされている源泉所得税を取り返すことが可能です。

    まぁ最近は、こんなことも当たり前のようにみんなやっていますから、
    日本はそのうち「サラリーマン総事業主化!」してしまいますね(笑
    Posted by kz@銅鑼湾 at 2006年11月13日 14:42
  4. PALCOMさん

    こんにちは。コメントありがとうございます。
    今のところ、サラリーマンが確定申告する機会を得るには、
    「給与以外の所得を作る」ことしかありませんよね。

    医療費たくさん使うとか、何度も家を買い換えるとか、
    現実的ではありませんし(笑)税金以上にお金が出ていきますからね。

    Posted by kz@銅鑼湾 at 2006年11月13日 14:50

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