本日の日経新聞経済面からの引用です。
「企業の税負担軽減2段階、実効税率下げ検討」
政府税制調査会は11月9日の会合で2007年度税制改正の論点を固めました。
焦点の法人税減税は、
1.企業の減価償却制度の見直し
2.約40%(国税・地方税合算)と主要国より水準の高い実効税率引き下げる
この2点について具体的な検討が進んでいます。
1.企業の減価償却制度の見直し
1.については、これまで購入価格の95%まで(例えば100万円でモノを買ったら95万円まで)しか、
償却できませんでしたが、改正によって100%全額(例えば100万円でモノを買ったら100万円)償却
することが可能になる公算が大きいとのことです。尚且つ耐用年数も短縮させるという案もあるとか。
不動産投資をされている方や、企業の会計に少しでも携われている方はお分かりだと思いますが、
"減価償却費"という言葉が、馴染みのない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明しますね。
例えば、給与所得のサラリーマンは
"税引き後"の所得からマイカーを購入するのですが、
事業主や会社経営者は
"税引き前"の収入からマイカー(名目上は社用車ですが)を購入します。
→関連記事「所得税の定率減税廃止合意 〜サラリーマン法人化のススメ〜」
そして、
マイカーの購入費用を少しづつ経費でおとして翌年以降の税金を下げることができます。
分かりやすく一言で言うと↑これが減価償却費用で、今まで95万円しか経費で認められなかったものを、
100万円まで認めてあげますよという事です。
2.約40%(国税・地方税合算)と主要国より水準の高い実効税率引き下げる
なお、2の実効税率の引き下げについては
2008年度以降、2段階に渡って実施される見通しです。
現在、
法人税+法人事業税+法人住民税を合算したおおよその実効税率は40%ちょいですが、
日本企業の国際競争力を促すために、経済界の有力者から税率引き下げを求める声が相次ぎ、
それが今回、政府税制調査会で実際に議論されることとなりました。
しかしそれに対して、
なぜかサラリーマンからは所得税率引き下げを求める声は出ません
なぜでしょう?恐らく解っていないから、解りにくい仕組みになっているからです。
年末調整という悪法があるゆえに、ほとんどのサラリーマンは税の計算を会社に任せてますので、
「どのような計算プロセスで所得税が弾き出され、いくら差し引かれてそれが何に使われているか?」
このあたりを、恐らく大多数のサラリーマンの方が理解していないと思うのです。
→関連記事「自分がいくら税金を払っているか知っていますか?(源泉徴収票の見方)」
このような
法人税減税に対して、一方ではサラリーマン増税+社会保障費増税の傾向を考えると、
今後日本の仕組みがどのように変化していくか、容易に想像できると思います。
口うるさくてやかましい経済界を考慮すると、法人減税(↓)を。
おとなしくて物言わないサラリーマンを考慮すると所得増税(↑)を。
このような傾向が数年は続くでしょう。
恐らくこの国で一番お金を持っている人は、プライベートカンパニーのオーナー社長でしょう。
彼らはビジネスはもちろんですが、不動産や株式も法人名義で運用されているケースが多いのです。
なぜなら、そうすることによって
上手に税金と資金移動をコントロールできるからです。
しかしコントロールできるがゆえに、こんな面倒な税務調査などにもお付き合いしなくてはいけません。
→関連記事「2〜3日間かかる税務調査を、せめて半日程度に短縮できないものか?」
サラリーマンは税金をコントロールできません。
しかも最近は個人の送金規制も強くなっている傾向にあり、送金限度額や窓口での身元証明など、
「資産運用さえもろくにさせてもらえないのか?」と言いたくなりますね。
今後の税制の動きを考えると、サラリーマンにとって氷河期とも言える時代が来るかもしれません。
そのうちこの国は息をしただけで、道を歩いただけで税金を徴収されてしまうのではないか?とさえ思います。
→関連記事「所得税の定率減税廃止合意 〜サラリーマン法人化のススメ〜」
以下の表を見ると、
日本は欧米に比べてまだまだ課税最低額が高いので、日本の国からしてみれば、
課税最低額をさらに引き下げていくことは当然強気の改正と言えるわけです。
→参考「東京税理士会 > 各国の所得税率と課税最低限」
Posted by causeway_bay at 14:45│
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