本日の日経新聞国際面からの引用です。
「シンガポール・マレーシア・インドネシアが、中国・インドに対抗、経済連携加速」
シンガポール・マレーシア・インドネシアがそれぞれ
ASEAN(東南アジア諸国連合)の
自由貿易協定よりさらに一歩踏み込んだかたちでの経済連携が進みはじめました。
貿易・投資・人材の面での自由化をさらに推進し、
三国でひとつの経済圏を形成することで
中国・インドなどの急成長するアジア域内の大国に対抗する戦略です。
昨年マレーシアは国際会議の場で、
「隣国同士強調しなければ経済発展で遅れをとりかねない」と
隣の小さな大国シンガポールに呼びかけました。
→関連記事「マレーシア&シンガポール、確執40年超えて進む改善関係」
マレーシア・シンガポール間の、
水供給問題、領空通過権、埋立地の境界線問題などの対立問題を
互いに話し合いながら建設的な協力推進体制に変えていこう!という前向きな関係です。
日本〜韓国〜中国も、もっと前向きに協力体制を確立してほしいものです。
"ジョホールバル(マレーシア)〜シンガポール〜バタム・ビンタン(インドネシア)"の位置関係は↑こんな感じ。
このエリアは、
マラッカ海峡とシンガポール海峡と併せて、
太平洋とインド洋を結ぶ主要航路の一つとなっています。
・インド洋〜大西洋航路のスエズ運河
・大西洋〜太平洋航路のパナマ運河
・そして太平洋とインド洋航路のマラッカ海峡
この場所は世界三大航路のひとつです。
※スエズ運河のすごさはこちらの記事をどうぞ↓
→関連記事「サウジアラビアが国内6カ所1200億ドルの「メガ経済都市」建設」
そのためシンガポールという国は地理的にとても重要な場所に位置しており、
「この場所で作って世界に運ぶ」
というのが、太平洋・インド洋航路を使う上では一番効率のよい、製造〜物流プロセスです。
太平洋・インド航路というのは、
大消費市場中国・インドをはじめとして、日本や韓国などの東アジア、
中東・アフリカなどへ物を運ぶための重要な航路です。
・・・という前提で、3カ国の経済連携のお話をすすめます。
【シンガポール〜マレーシアの経済連携】
まずマレーシア政府が目指すのは
「南部ジョホール経済特区(SJER)プロジェクト」
→参考「South Johor Economic Region(SJER)」
シンガポールの約3倍の国土面積を持つ地域に、
ハイテク工業団地・物流・教育・医療・観光などの
国際的な拠点を集積し、シンガポールの資金や技術を引き込むというプロジェクト。
そこにはもちろん、
優遇税制や投資認可の簡素化などを推し進めて、シンガポールからの入国審査や
税関などを経ずに外国人が簡単に行き来できる地区も設けるそうです。
この地域へのインフラ整備などで、
2010年までに470億リンギ(約1兆5500億円)の投資を予定していて、
その予算には、域内のモノレールなどの都市交通網を建設する計画もあります。
【シンガポール〜インドネシアの経済連携】
また、シンガポール〜インドネシアの経済連携は、シンガポールからフェリーで約1時間のところにある、
インドネシアの
ビンタン島・バタム島が経済特区として開発されます。
こちらもマレーシアのジョホール経済特区と同様に、企業進出を促すための投資手続きを簡素化し、
出入国・税関手続き等でも、特別措置を実施する予定です。
シンガポール経済開発庁は、
「ビンタン島に自動車産業などを誘致したい」とコメントしています。
タイ・インドネシアをはじめとした、ASEAN地域の自動車産業はさらに競争激化しそうです。
→関連記事「タイ自動車生産100万台突破へ 〜タイはアジアのデトロイト〜」
シンガポール・マレーシア・インドネシアの3カ国は、2007年も好調な経済成長が続く見通しですが、
製造拠点として競合する中国・インドに負けないよう、3カ国共同での経済圏開発で投資環境を整備します。
その一方で、中国・インドの巨大消費市場向けの製造拠点として発展する機会もにらんでいます。
この3カ国の連携は、2015年を目指すASEAN統合を先取りした動きといえます。
1.金融や技術ノウハウに優れたシンガポール、2.製造拠点としてのマレーシア・インドネシアというように、
各国の得意分野を生かして分業体制を確立することで、
国境を越えた大きな経済圏を作ることが可能です。
この地域に製造拠点を設けることで、優遇税制や助成制度など様々な恩恵が受けられますから、
日欧米の製造業が、コスト競争に勝つためにシンガポール・マレーシア・インドネシアに進出してきています。
中核部品の生産や設計・デザインはシンガポール、周辺部品の生産はマレーシアジョホール。
といった具合に、自動車・PC周辺機器・通信機器メーカーなどがすでに進出をはじめています。
こうなることで3カ国の雇用が潤うばかりでなく、銀行・物流・交通網・不動産開発など他の分野においても
さらに大きなビジネスチャンスがおとずれるのです。
シンガポールの公共交通機関
SMRTは、ジョホールとシンガポールを結ぶモノレール建設に興味深深だそうです。
そして数日前の新聞にも載っていましたが、
シンガポールの不動産価格が現在ぐんぐん上がっており、
これからまだまだ上がるだろうとの見解も書かれていました。
→関連記事「Credit Agricole 109%元本確保型アジアREITsファンド」
日本も沖縄や北海道の経済特区構想がありますが、とにかく動きが遅い。。。
このようなプロジェクトはスピード感が命なのに、
日本政府はどうしても「後回し体質」なために決定的なチャンスを逃しています。
ここ最近ブロック化する世界経済の流れの中で、経済特区構想がある種ブームですが、日本も早いうちに、
何かインパクトのある、日本ならではの経済政策を打ち出さないと、ますます乗り遅れる気がします。
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Posted by causeway_bay at 19:12│
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